Tomoko’s Violin Diary 第一章バイオリン物語16

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ーアメリカのオーディション


NWS(ニューワールドシンフォニー)に居る間、それなりにオーディションは受けた。
オケに入ってから英語をろくに話せなくて毎日おどおどしていた私を、アメリカ人、中国人、韓国人などがそれは親切にお世話してくれた。
その中で特に丁寧に英語で今何が起こっているのかを教えてくれる人と、そのうちお付き合いするようになり、その人が行くオーディションにくっついて行っては、自分もオーディションを受けるという形をとった。
お友達とオーディションを受けに行った事もしばしばある。

オーケストラのオーディションは普通のコンサートでソロを弾いたりするのより、私にとってはとても難しかった。
弾き方がまず違う。
生来いい加減な私が自由奔放に音楽を歌うという事がアウト。
リズム、テンポ、指示にいかに正確に弾くかが第一条件となる。
特にオーケストラでよくある弓を跳躍する運動をスピッカートというが、曲によって色んな種類のスピッカートがあり、そこをクリアするのがとても困難だった。

先にも述べたメンタルブロックも入り、異常なまでの緊張がたたったのもあり、受けるオーディション、オーディション落ちまくった。

その時の唯一の光が、NWSにいた某オーボエストは30回オーディションを受け、全て落ちた。そして最後に受かったところがあの、ボストン交響楽団だったという伝説。本当の話だ。

’’頑張っていれば私もいつかどこかに受かるに違いない’’と言い聞かせ、不安と希望の中毎日を過ごした。

1年目が過ぎ、2年目。NWSメンバーがオーディションに受かってどんどんNWSから居なくなる。そして新しい団員が増える。

こんなに毎回毎回緊張していたら、いつになってもオーディションに受からないのではないかという不安でいっぱいになる。

例の如く、団員に相談したところ、ベータブロックという緊張によって起こる高まる心拍数を抑える薬を使ったら?と言われた。

決して大麻とかマリファナなどの危ない薬ではない。

昔ここの団員がマリファナをクローゼットで栽培していたという話は聞いた事があるが…。

そのベータブロックは、精神安定剤のようなもので、本番の前に半錠を飲むとかなり落ち着くらしい。

そのようなものがあることは知っていたが、私のオケスタの先生、メリールーはそれを飲んでる人は演奏ですぐわかると言い、薬を飲むことに猛反対だった。

だから今まで使った事がなかったが、お仕事を獲得するには仕方ないかと思い出した。

結局使ってみて言える事。薬を飲もうが飲むまいが、結局オーディションを受ける心構えが出来ていないと結果は同じ。

オーディション前にメンタルの練習をしていかなければならないという事がずーっと後になってわかった。

私は、審査員の顔が見える方がよく弾けるという事も分かってきた。

昔のニューワールドシンフォニーホールの前で
マイアミビーチでオケのメンバーと