Tomoko’s Violin Diary 第一章バイオリン物語6

 Life

ーアメリカ行きを考え出す


アメリカに行きたいのならアメリカ留学の経験がある先生に習うのが良いと勧められ、東京のレッスンに通いだす。
そのH先生はジュリアードを出て、かの有名な東京カルテット(弦楽四重奏団)の第一バイオリンに就任した方だ。演奏を何度か聞いたことがあるが音が伸び伸びしていて、感動を受けた。
この先生についた理由もあり、大学4年位から東京のオケのオーディションを受け始める。
オケスタ(オーケストラスタディー)の勉強を時間をかけてやっていないのでオーディションも受からない。
その時の先生の勧めで東京の大学院に行けば?とが、その提案されたがどうしてもその気にならない。
名古屋でフリーランスの場も固めてるし、このままここで働いてもいいかと思っていた。

が…

ー家事に遭い、住む家が無くなる

アパートが火事?????

お友達と自宅で長電話をしていたら、なんか焦げ臭い匂いがする。電話を待ってもらって、家の中を点検したら、風呂場がメラメラと燃えていた。

ああいう時って、血迷って、小さいタオルで火を消そうとかバカなことを考える。

暗いから電気を危ないのにつけてしまう。つけても黒煙で真っ暗。そのうち天井タイルが音を立てて落ちて割れる。

119番を電話しようとしてもつながらない。焦って受話器を持つのを忘れて電話するから。この時代携帯もない。運良く、隣の美術科の女の子が消防車を呼んでくれた。

無茶苦茶動揺してる私は、右手にバイオリン、左手にアライグマのぬいぐるみを持って裸足で逃走。

いつもあってる大家さんに’’あなた田中さん?’’と聞かれて何大家さんまで動揺してんのかと思い、自分の顔をあとで鏡でチェックしたら、顔黒高校生並に黒い?

髪の毛も熱でチリチリに切れ、まつ毛、眉毛が燃えていた。

念のために入院となり、救急車で病院に搬送される。

家財ほとんどがダメになる程度で火傷もなくバイオリンも無事。不幸中の大幸いである。神様、ほんとありがとう。

住む家がないので、とりあえず、2週間入院。

もらう薬があまりにもカラフルで、あとで聞いた話だが、ボケ老人が飲む薬だったそうな。なんでなんだ?手足から点滴をされ、最後の方は血管痛が起きていた。

この家事のため、沢山詰まっていたフリーランスのお仕事を2週間全部蹴るしかチョイスは無かった。

火事にあったショックよりも仕事に穴をあける方が怖かった。せっかく築いた信頼関係もパア。

病院にいながらも、丁寧に一件一件お仕事に穴を開けたお詫びの電話を入れた。皆様、状況が状況なだけに快く承諾してくださった。

当たり前だけど、収入はその間無し。

一番キツイのはフリーランスの仕事を蹴ったらもう次の話はこなくなるという確率も多い。

フリーランスは弾ければ稼げるが、保証がないということをまざまざと体験した。

その時にいろいろ相談にのってくれてた人からのアドバイスもあり、ここは一度アメリカに留学をして箔(ハク)をつけ、東京のオケを目指そうという案に決まった。

リサイタルや、室内楽コンサートを名古屋で開いていた頃の写真